犬の舌の潰瘍について｜見逃したくない症状と対処法を獣医師が解説

「犬の舌に赤くただれたような部分がある」
「ご飯を食べるときに痛そうにしている」
「口臭が強くなっている気がする」

犬の舌にこのような変化がみられた場合、犬の舌に潰瘍ができているかもしれません。
犬の舌にできる潰瘍は、見た目の異常だけでなく、痛みや不快感によって食欲低下を招くこともあります。
特に口の中のトラブルが原因となるケースが多く、歯科的なケアや治療が重要になることもあります。

今回は、犬の舌に潰瘍ができる原因や、症状、治療のポイントについて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、万が一犬の舌にトラブルが起こった際にお役立てください。

犬の舌の潰瘍とは？

犬の舌の潰瘍とは、舌の粘膜がただれてえぐれたようになっている状態をいいます。

初期には赤みや腫れだけのこともありますが、進行すると舌の一部が白っぽくなったり、出血したり、強い痛みを伴うようになります。

潰瘍があると食事や水を嫌がるようになるため、食欲低下や脱水を招く原因にもなり体の不調を引き起こすため注意が必要です。

舌に潰瘍ができる主な原因

犬の舌の潰瘍にはさまざまな原因がありますが、中でも歯や口の中の問題が関与していることが非常に多くあります。
舌の潰瘍は原因によって対処法は大きく異なります。
潰瘍ができている時には市販薬や自己判断での処置は避け、早めに動物病院での診察を受けましょう。

歯の異常や口腔内の炎症

• 尖った歯や破折した歯が舌に当たっている
• 歯石が大きくなって舌に接触する
• 重度の歯周病によって舌に炎症が波及する

舌の潰瘍は歯や歯茎のトラブルから起きていることも多く、歯科の視点での診断がとても重要です。

外傷や異物

• とがったおもちゃや骨をかんだ
• 電気コードなどをかじって火傷した

誤って口にした物や遊んでいる時の外傷が、舌の粘膜を傷つけて潰瘍の原因になることがあります。

化学的な刺激

• 強い洗剤や薬品の誤飲
• 特定の薬剤への過敏反応

家庭内の洗剤や薬品を誤ってなめた場合や、体質による薬剤の反応で潰瘍ができるケースもあります。

感染症や全身疾患

• ジステンパーやパルボウイルスによる免疫の低下
• 自己免疫疾患による口内炎
• 腫瘍などの病変

体全体の病気が影響して口腔内の粘膜に潰瘍ができることもあります。
症状が長引く場合や広範囲に及ぶ場合には、全身的な検査が必要です。

舌に潰瘍ができるとみられる症状

舌に潰瘍ができると、以下のような症状が見られることがあります。

• 食欲不振
• 口を気にして前足でこする
• よだれが多い・泡状のよだれ
• 口臭の悪化
• 舌を出したままにしている

ご家庭ではなかなか口の中を詳しく見ることが難しいこともあるため、このような症状がある場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
また、舌の潰瘍だけでなく全身的な疾患が隠れている可能性もあるので、放置するのは危険です。

診断と治療のポイント

舌の潰瘍の診断は、まずは口腔内の視診と触診を行い、舌の状態を確認します。
必要に応じて、歯や歯茎の状態、口腔内全体を麻酔下で詳細に検査することもあります。

治療内容は原因によって異なりますが、主に以下のような対応が取られます。

• 歯のトラブルが原因の場合：歯石除去、破折歯の抜歯、尖った歯の修整など
• 外傷の場合：消炎鎮痛薬や抗生剤の投与、保護剤の塗布
• 感染症：原因ウイルスや細菌に応じた治療
• 腫瘍の疑いがある場合：組織検査のうえ、外科的切除を検討
  

歯の問題を取り除くだけで舌の潰瘍が改善するケースも多く、歯科の視点を持った診察が鍵となります。

お口の健康管理

舌の潰瘍の早期発見や予防のためには、日頃からのデンタルケアと定期的な口腔チェックが欠かせません。

• 毎日の歯みがきを習慣にする
• 硬すぎるおもちゃや骨を避ける
• 定期的に歯科健診を受ける

などが口腔ケアには重要です。

歯科診療に力を入れている動物病院で、舌や歯茎を含むお口全体のチェックを定期的に実施することで、いざという時の口腔トラブルにも対応ができるので安心ですね。
ご家庭でのデンタルケア指導もご不明な点があれば獣医師に相談してみましょう。

まとめ

犬の舌の潰瘍は、見た目だけでなく日常生活にも大きな支障をきたすことがあります。
その背景には、歯や口の中の異常が隠れていることも多く、早期発見と適切な歯科治療が欠かせません。
愛犬が食事を嫌がる、舌に赤みやただれが見えるといった症状に気づいたら早めに動物病院を受診しましょう。

武蔵小山どうぶつ病院では、歯科を中心とした口腔ケアに力を入れています。
舌の潰瘍などのお口のトラブルにも、総合的な視点で対応いたします。
気になる症状があれば、お気軽にご来院ください。

よくあるご質問（Q&A）

Q1. 犬の舌に潰瘍ができる原因は何ですか？

A. 犬の舌の潰瘍の原因には、歯のトラブル（尖った歯・歯石・歯周病など）、おもちゃや骨による外傷、薬剤や洗剤の誤飲、全身性疾患（感染症や自己免疫疾患）などが挙げられます。
歯科的な異常が関与していることも多く、動物病院での診察が重要です。

Q2. 舌の潰瘍があるとどんな症状が出ますか？

A. 舌に潰瘍ができると、食欲の低下、口臭、泡のようなよだれ、口を気にするしぐさ（前足でこするなど）、舌を出したままにするなどの症状が見られます。
これらの変化があれば、早めに獣医師の診察を受けてください。

Q3. 舌の潰瘍は自然に治りますか？

A. 舌の潰瘍は原因によっては自然に治ることもありますが、多くの場合は治療が必要です。
歯の修整や歯石除去、投薬、腫瘍の検査などが必要になるケースもあり、放置すると悪化したり、全身状態に影響が出るため注意が必要です。

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