
犬の乳歯遺残とは|原因・影響・治療法を獣医師が解説
犬にも人間と同様に「乳歯」があるのをご存知ですか?
犬の歯は、生後6〜7ヶ月を目安に「乳歯」から「永久歯」に生え変わっていきます。
その過程で乳歯が抜けずに残ってしまう状態を「乳歯遺残」と呼びます。
乳歯が残っているとどんな問題が起きてくるのでしょうか?
ここでは犬の乳歯遺残について、原因やリスク、治療法に関して詳しく説明していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の歯を守るために乳歯遺残に関して知識を深めていきましょう。
乳歯遺残とは
乳歯遺残とは「永久歯が生えてきたのにも関わらず、乳歯が抜けずに残っている状態」を示しています。
犬の歯は、生後3ヶ月ごろから生後6〜7ヶ月までを目安に、乳歯から永久歯に生え変わります。
永久歯が作られる時期に、乳歯の歯根が徐々に溶けてくることにより、乳歯の脱落となります。
乳歯遺残は、抜けるべき乳歯の歯根の吸収不良が起きたり、永久歯が正しい場所に生えないことなどにより起こるものです。
永久歯と乳歯が2枚歯のようになっている状態ですね。
主に犬歯(1番尖っている歯)や切歯(前歯)での発生が多いです。
乳歯遺残の原因
乳歯遺残の原因は以下のようなものがあります。
- 小型犬や短頭種
- 永久歯の発育不良
- 噛む刺激などの不足
小型犬(チワワやポメラニアン、トイプードルなど)や短頭種は遺伝的に乳歯遺残が多いとされています。
小型犬や短頭種は鼻が短く顎が小さいという特徴があるため、口腔内のスペースが狭い状態です。
そのため、永久歯が生えにくくなったり乳歯が抜けにくくなり、乳歯遺残の原因となります。
乳歯遺残以外にも、小型犬や短頭種には不正咬合(噛み合わせが悪くなる)といった問題も起きやすいです。
また、永久歯が何らかの原因で正常に発育しない場合も乳歯を押し出す力が不足してしまい乳歯遺残の原因となってしまいます。
乳歯が抜ける際にはある程度の刺激が必要であり、硬い食べ物やおもちゃを噛むことで、乳歯が自然と抜けやすくなるでしょう。
しっかり噛むという行為が不足すると、乳歯が残る可能性が高まるという報告もあります。
ただし、硬すぎるおもちゃや食べ物は歯が欠ける原因となったり、破片の誤飲に繋がる可能性があるため、その点は注意が必要です。
乳歯遺残による影響
乳歯遺残を放置すると、以下のようなリスクがあります。
- 不正咬合(歯並びの乱れ)
- 痛みや炎症
- 歯垢や歯石の沈着
歯が生える向きが乱れることにより、犬が口を閉じた時にその歯によって口内の組織が傷ついてしまう場合があります。
痛みや炎症の原因となったり、傷ついた組織に対して細菌感染が起きると更に状態が悪化するでしょう。
また、歯並びが悪くなることから、隙間に歯垢や歯石の沈着が起きやすくなり将来的に歯周病のリスクが上がります。
乳歯遺残の確認
犬の乳歯遺残は、基本的には肉眼での観察によって発見します。
犬歯や切歯に発生が多いため、観察はしやすい箇所ですね。
成長期の犬の歯の生え変わりの期間は、切歯で数日、犬歯で1〜2週間です。
一時的に乳歯と永久歯が併存する期間があるため、成長期の犬の場合は乳歯遺残となるかどうか期間をおいて確認する場合もあります。
またレントゲンの撮影により乳歯や永久歯の状態の確認を行う場合もあります。

治療・対処法
乳歯遺残が確認された場合は、基本的には全身麻酔下での抜歯がおすすめです。
成長期に近い場合は自然に抜け替わる可能性があるため、経過観察を行う場合もあります。
ただし多くは避妊去勢手術を行う際に、一緒に抜歯の処置を行うことが多いです。
乳歯の抜歯の際には、永久歯を傷つけないように乳歯を根本から抜歯していきます。
場合によっては歯茎を切ったり、歯の周りの骨をを削って乳歯を取り出すような、大掛かりな処置を行うこともあります。
乳歯遺残の予防
基本的に、乳歯遺残を完全に予防するのは難しいです。
出来る対策としては、子犬の頃から噛めるおもちゃを使い、歯への刺激を増やしてあげることによって乳歯の抜け替わりを促すことなどがあります。
前述の通りですが、誤飲やケガなどには注意をして行っていきましょう。
また子犬のうちから動物病院にて、定期的な口腔内の観察を行うことで、早期の治療に繋げることができます。
小さいときから、ご自宅で歯ブラシなどで歯のお手入れをする習慣をつけ、日常的に愛犬の歯の状態を把握することがとても大事です。

まとめ
乳歯遺残は、一見すると小さな問題にも見えるかもしれませんが放置しておくとさまざまなトラブルにつながる可能性があります。
特に小型犬ではよく認められる疾患のため、獣医師や飼い主さんが早めに気づき、適切な対応を取ることが大切です。
当院では歯科診療を強みにしています。
もし「うちの子、歯が2本並んでるかも?」「歯の生え方がおかしいかも?」と思ったら、ぜひ当院にご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 犬の乳歯遺残は自然に抜けることがありますか?
A. 犬の乳歯遺残は、多くの場合は抜けずに残ってしまいます。ただし、成長期に近い段階であれば自然に抜ける可能性もゼロではありません。
動物病院で経過を観察し必要に応じて抜歯を検討しましょう。
Q2. 乳歯遺残を放置するとどうなりますか?
A. 乳歯遺残を放置すると歯並びの乱れや不正咬合、口内炎、歯垢や歯石の蓄積による歯周病のリスクが高まります。
また、口の中の組織が傷ついたり、細菌感染を起こすこともあるため、放置せず早めの対応が必要です。
Q3. 乳歯遺残はどの犬種で起こりやすいですか?
A. 乳歯遺残はチワワ、トイ・プードル、ポメラニアンなどの小型犬や短頭種で特に多く見られます。
これらの犬種は口腔内が狭く、永久歯が正常に生えにくいため、乳歯が残りやすい傾向にあります。
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