愛猫の口臭が強くなったり、歯が黄色や茶色になっていませんか?
愛猫にそのような症状が見られた場合、歯周病の可能性があります。
歯周病は2歳以上の猫の約70%以上が罹患しているとも言われている非常に身近な疾患です。
そんな歯周病の主な治療法は全身麻酔下での「スケーリング(歯石除去)」です。
しかし愛猫に麻酔をかけることに不安を感じる飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、猫のスケーリングと麻酔について、必要性やリスク、術後のケアまで詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、猫の麻酔下でのスケーリングを受ける際にお役立てください。

猫のスケーリングとは?
スケーリングとは、歯に付着した歯石や歯垢を専用器具で除去する処置です。
スケーリングの呼び方は歯石除去、クリーニングなどさまざまです。
スケーリングではスケーラーという専用の器具を用いて歯垢や歯垢が固まってできた歯石を取り除いたり、歯周ポケットの中を洗浄してきれいにします。
猫のスケーリングを行う目的の多くが歯周病の治療です。
歯周病は歯垢や歯石に含まれる細菌が原因で、歯ぐきや歯を支える骨が破壊される進行性の病気です。
歯周病の原因となる歯垢は歯磨きで取り除くことができます。
しかし歯垢が取り除かれずに2、3日経過すると、唾液中のカルシウムが沈着して石のように固くなり、歯石になります。
歯石の状態になると歯磨きなどでは除去できません。
スケーリングを行うことによって歯石を取り除き、歯周病の治療を行います。
猫の歯周病の症状は以下のとおりです。
- 強い口臭
- よだれ
- 歯ぐきの赤み・出血
- 食欲低下
- 顔を触られるのを嫌がる様子
- 歯のぐらつき
歯周病が進行すると、抜歯が必要となる場合もあります。
そのため気になる症状がある場合は、早期に動物病院を受診し治療を行う必要があります。
なぜ猫のスケーリングには全身麻酔が必要なの?
猫のスケーリングは、基本的に全身麻酔下で行われます。
なぜ全身麻酔が必要となるのか、それぞれ詳しく解説していきましょう。
安全に処置するため
スケーリングでは超音波スケーラーという器具を使用します。
猫が動くと舌や歯ぐきなど口腔内を傷つける危険があるため、全身麻酔で不動化する必要があります。
また、スケーリング処置中に水や汚れを誤嚥するリスクもあります。
全身麻酔下では気管チューブで気道を保護できるため、水や汚れが肺へ入り込むのを防ぎながら安全に処置を行うことが可能です。
歯周ポケットまで処置する必要があるため
歯周病の原因は、歯の表面だけでなく歯周ポケット内部にも存在します。
無麻酔では猫が痛がったり不快感を感じて動いてしまう可能性があるため、奥深くまで器具を入れて処置することができません。
表面に見えている歯石だけとっても、歯周病の根本的な改善にはならず、短期間で歯周病が悪化する原因となってしまう可能性もあります。
長時間の処置が必要となるため
スケーリングを行う場合、歯石除去や歯周ポケットの処置以外にもさまざまな処置を行います。
- 歯科レントゲンの実施(歯の根元の評価)
- 歯石除去
- 歯周ポケットの処置
- 抜歯(状態に応じて)
- ポリッシング(歯に磨きをかける)
このような多くの処置を実施する必要があるため、長時間の麻酔が必要となります。
猫のスケーリングの流れ
猫の麻酔下スケーリングを実施することになった際の流れを詳しく解説します。
麻酔導入
麻酔は、愛猫の体重や年齢、健康状態に合わせて適切な量を調整しながら行います。
全身麻酔がしっかり効いたことを確認したうえで、処置を進めていきます。
口腔内のレントゲン撮影
麻酔中に歯や顎の骨の状態を確認するためのレントゲンが実施されます。
これにより、外から見ただけではは分からない歯周病の進行具合や歯根の異常なども把握できます。
スケーリング(歯石除去)
専用の器具を使い、歯の表面や歯周ポケットにこびりついた歯石を丁寧に取り除きます。
ポリッシング(仕上げ磨き)
スケーリングの後、電動ブラシのような器具で歯の表面をなめらかに整えます。
表面がつるつるになることで、歯石の再付着を防ぎやすくなります。
抜歯(必要な場合のみ)
もし歯がぐらついていたり、歯周病が進行していたりする場合には抜歯が必要になることもあります。
抜歯後は必要に応じて歯肉の縫合を行います。
覚醒(麻酔からの回復)
手術が終わったら麻酔を止めて、しっかりと目が覚めるまで慎重に見守ります。
覚醒後も体温の管理や呼吸、体調のチェックを丁寧に行います。
処置が終わった後は、必要に応じて抗生剤や鎮痛剤の投与をご自宅でも行います。
無麻酔スケーリングは危険?
最近では「無麻酔での歯石除去」を行う施設もありますが、多くの動物病院では推奨されていません。
無麻酔スケーリングには以下のような問題点があるためです。
- 強いストレスがかかる
- 深部の歯石除去ができない
- 誤嚥の危険がある
- 急な動きでケガをする
- 歯周病の見落としのリスクがある
無麻酔での歯石除去は見た目だけ綺麗になっても、病気そのものは改善していなかったり悪化するケースがあります。
安全に確実に治療を行うために、全身麻酔は必須となります。

麻酔は危険?猫の全身麻酔リスク
「麻酔が怖いから歯石除去の実施を悩んでいる」という飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
短時間の鎮静や数時間続く全身麻酔でも、麻酔薬を使用するときには常に副作用のリスクがあります。
全身麻酔で起こりうる主なリスクは以下のとおりです。
- 麻酔薬に対するアレルギー反応
- 気管挿管による気道損傷
- 術中の低血圧や不整脈
- 麻酔覚醒不全(麻酔から目覚めない)
- 臓器への負担(腎臓、肝臓、心臓など)
- 術後の嘔吐による窒息や誤嚥性肺炎
特に高齢猫や持病をもった猫は麻酔のリスクが高まります。
しかし現代の獣医療における麻酔技術の向上に伴い、事前の検査によってリスク評価を行うことが可能です。
主に以下のような検査を実施します。
- 身体検査
- 血液検査
- レントゲン
- 超音波検査
検査結果を評価して、麻酔時間や処置内容を検討していくことで安全に全身麻酔下でスケーリングを行っていくことが可能です。
スケーリング後の注意点
全身麻酔下でのスケーリング実施後には以下のような症状がみられる場合があります。
- ぼーっとする様子
- 軽い食欲低下
- よだれ
- 軽度の口からの出血
通常、このような症状は1〜2日で落ち着きます。
また抜歯後は柔らかい食事を与えるようにしましょう。
スケーリングを受けたあとも動物病院を定期的に受診することが重要です。
口腔内の状態を定期的に確認することで歯周病の再発を防ぐことができます。
ご自宅でのデンタルケアの習慣を
スケーリングをしても、適切な歯磨きをしなければ再び歯石は付きます。
以下のようなデンタル用品を活用してみることが有効です。
- 猫用歯ブラシ
- デンタルジェル
- デンタルおやつ
- 飲み水添加タイプ
特に毎日の歯みがきは、歯周病予防の基本になります。
猫の状態に合わせて、無理のない範囲から習慣化していきましょう。

まとめ
猫のスケーリングは、歯周病治療として非常に重要な処置です。
全身麻酔に不安を感じる飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、
- 安全な処置
- 痛み軽減
- 歯周病の改善
のためには必要不可欠とされています。
特に猫は痛みを隠す動物です。
「まだ食べているから大丈夫」と思っていても、実際にはかなり痛みを我慢していたり歯周病が進行しているケースもあります。
愛猫が長く快適に暮らせるように、定期的な口腔チェックを心がけましょう。
当院は歯科診療に力を入れています。
猫のスケーリングのご相談や、日頃からの口腔内チェックまでいつでもご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q.猫のスケーリングには必ず全身麻酔が必要ですか?
A.猫のスケーリングには基本的に全身麻酔が必要です。
安全に処置を行うことや、歯周ポケットの奥までしっかり治療するために全身麻酔下で治療を行います。
Q.猫の無麻酔スケーリングで歯周病を治療できますか?
A.猫の無麻酔スケーリングでは歯周病の根本的な治療は難しいとされています。
見えている歯石は取れても、歯周ポケット内の処置ができず、歯周病の改善につながらない場合が多いです。
Q.猫のスケーリング後はどのようなことに気をつければよいですか?
A.猫のスケーリング後は、ぼーっとする様子や軽い食欲低下、よだれなどが見られることがあるため様子をよく観察しておきましょう。
通常は1〜2日で落ち着きますが、抜歯を行った場合は柔らかい食事を与えるようにしましょう。
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