「最近、猫の口の臭いが気になる」「よだれが増えてきた」愛猫にそんな症状は見られませんか?
これらの症状は歯周病や口内炎でもみられるため見過ごされがちですが、背景に口腔内腫瘍が隠れていることもあります。
猫の口腔内腫瘍は悪性腫瘍の割合が非常に高いのが特徴で、早期発見・早期治療がとても重要な病気です。
この記事では猫の口腔内腫瘍の種類や治療法、気をつけるべきことなど詳しく解説いたします。
ぜひ、最後までお読みいただき愛猫の口の異変に気がついた際などにお役立てください。

猫の口腔内腫瘍の特徴は?
猫の口腔内腫瘍は、口の中にできる腫瘍の総称で、以下のような箇所に発生します。
- 歯肉(歯の周り)
- 舌
- 頬の内側
- 上顎・下顎
- 口蓋(上あごの奥)
- 扁桃
上記のように猫の口腔内腫瘍は口の中のさまざまな場所に発生する可能性があり、そのほとんどが悪性腫瘍です。
猫の口腔内腫瘍の初期段階では、
- 口臭が強くなる
- よだれが増える
- 口を気にする仕草をする
- ドライフードを嫌がる
といった症状がみられます。
猫の口腔内腫瘍は見た目では歯周病や口内炎と区別がつきにくいことも多く、発見が遅れがちになるため注意が必要です。
そして口腔内腫瘍が進行すると、
- 食欲低下・体重減少が起きる
- 口から出血する
- 顔が腫れる
- 口が閉じにくくなる
- 痛みで攻撃的になる
といった症状が見られるようになります。
口の痛みや食事のしづらさが続くことで、猫の日常生活に大きな負担がかかってしまうため注意が必要です。

猫に多い口腔内腫瘍の種類
猫の口腔内腫瘍にはさまざまな種類があります。
それぞれ解説していきましょう。
扁平上皮癌
扁平上皮癌は猫の口腔内腫瘍のなかで最も多く、約60~70%を占めます。
扁平上皮癌は悪性腫瘍で、非常に進行が早く、骨を破壊しやすいのが特徴です。
下顎や上顎にできる扁平上皮癌は転移は比較的少ないですが、周囲の組織に広がりやすいとされています。
一方で、扁桃に生じる扁平上皮癌は、下顎や上顎に発生する扁平上皮癌と全く異なる性質を持ちます。
診断時には90%以上で遠隔転移をしているという怖い腫瘍です。
線維肉腫
線維肉腫は猫の口腔内腫瘍の10%程度を占める悪性腫瘍です。
主に歯肉に多く発生を認め、境界が不明瞭で再発がしやすく周囲組織に広がりやすい特徴があります。
リンパ節転移や遠隔転移は、扁平上皮癌と同様に少ない傾向にあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫は黒っぽい見た目の腫瘤で、転移しやすく進行が早い特徴があります。
猫では比較的まれな腫瘍ですが、悪性度が高いため注意が必要です。
良性腫瘍
猫の口腔内腫瘍の多くは悪性腫瘍ですが、良性のものもあります。
エプーリスなどが代表的な腫瘍です。
良性であっても食事のしづらさにつながることもあるため、早めに治療を受けるようにしましょう。

猫の口腔内腫瘍の診断方法
猫の口腔内腫瘍を診断するためには以下のような検査を実施します。
口腔内視診
口腔内視診では口の中を観察し、腫瘍の状態や位置などを確認してもらいます。
場所によっては状態をしっかり確認するために鎮静や麻酔が必要になる場合もあります。
細胞診・生検(病理検査)
腫瘍の確定診断には腫瘍の生検を実施し、病理検査に出すことが必須です。
腫瘍の一部を採取し、病理検査をすることで腫瘍の種類や良性・悪性が判断されます。
また下顎リンパ節などの所属リンパ節への転移がないか確認するために、リンパ節の細胞診検査を実施する場合もあります。
画像検査
レントゲン検査では口の周囲を撮影し、顎骨破壊の確認を行います。
胸部のレントゲン撮影は、肺転移の有無を確認してもらうのにも有用です。
また腫瘍の広がりの確認や手術計画のために、全身麻酔下でのCT検査が実施される場合もあります。
口腔内腫瘍の治療方法
猫の口腔内腫瘍は転移は比較的少ないとされていますが、局所浸潤性が非常に強く(根が深い)、再発率が非常に高いです。
そのため治療は外科手術による切除が基本となります。
外科手術単独の場合もあれば、術後にさまざまな治療法を組み合わせていくケースもあります。
外科手術
猫の口腔内腫瘍の治療の第一選択は外科手術です。
腫瘍は小さくても、そこから目に見えない腫瘍の根が伸びています。
この腫瘍の根まで手術で全部摘出しなければ、再発を起こしてしまいます。
そのため可能であれば広範囲切除をすることが重要です。
腫瘍の状態によっては顎の一部を切除する「顎骨切除」を実施する場合もあります。
また術後は一時的に口からごはんを食べられなくなるため、手術と同時に栄養チューブ(胃瘻、食道、経鼻)を一時的に設置することが多いです。
放射線治療
放射線治療は外科手術後の補助治療として実施される場合があります。
腫瘍を一時的に小さくしたり、痛みの軽減などが目的となります。
また外科手術が難しい場合にも実施されますが、根治治療にはなりません。
抗がん剤
抗がん剤治療も外科手術後の補助治療として実施されます。
単独では効果が限られることがほとんどです。
緩和ケア
腫瘍の状態や猫の年齢から治療が困難である場合は、緩和ケアという選択肢もあります。
- 痛み止め
- 抗生物質(細菌感染対策)
- 食事のサポート
「治す」よりも「苦痛を減らす」ことを中心に猫のQOL(生活の質)を維持できるようにご自宅でケアしていく方法となります。
猫の口腔内腫瘍の予後(生存期間)
猫の口腔内腫瘍は、完全に切除できれば生存期間が伸びる可能性があります。
しかし猫で多くみられる扁平上皮癌はすでに進行した状態で発見されることも多く、平均生存期間が2~6か月とも言われています。
腫瘍の発見時期が予後を大きく左右するため早期発見が重要です。
早期発見のためにできること
猫の口腔内腫瘍は進行が早く、見つかったときには治療が困難な場合も多くみられます。
- 健康な状態でも定期に口腔内検診を受ける
- 口臭・よだれなどの変化を軽視しない
- 歯周病と言われても改善しない場合は早めに獣医師に相談する
- セカンドオピニオンも考慮する
上記のようなことを心がけ、腫瘍の早期発見を目指していきましょう。

まとめ
猫の口腔内腫瘍は悪性が多く進行が早いのが特徴です。
初期は歯周病や口内炎と間違われやすい点に注意が必要です。
早期発見し、生検による早期診断が命を左右します。
見た目より痛みやQOL(生活の質)を重視した治療選択も大切です。
当院は歯科診療に力を入れています。
猫の口の異変に気がついた際や、口腔内腫瘍の治療のご相談までいつでもご来院ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 猫の口臭やよだれは、歯周病とどう見分ければよいですか?
A. 見た目や症状だけで歯周病と口腔内腫瘍を区別することは困難です。
歯科治療や投薬を行っても改善しない場合は、腫瘍の可能性を考えて詳しい検査が必要になります。
Q2. 猫の口腔内腫瘍は、できものが小さくても危険ですか?
A. 見た目が小さくても、骨の内部に深く広がっていることがあります。
腫瘍の大きさだけで判断せず、画像検査や病理検査による評価が重要です。
Q3. 高齢の猫でも検査や治療は受けられますか?
A. 年齢だけで治療ができないと判断されることはありません。
全身状態や腫瘍の進行度を踏まえたうえで、外科治療・緩和ケアなど複数の選択肢から検討します。

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